下手な自己啓発書を読むくらいなら、アカギの言葉に触れるべし

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ここ最近、少しずつ読み進めていたマンガを読了しましたが、
怒涛のラストで一気に心を鷲掴みにされてしまったのでその気持ちをぶつけてみます。

読み終えた本は「天 天和通りの快男児」
あの「カイジ」シリーズで有名な福本伸行作品で、
人気キャラクター「赤木しげる」が初登場した作品です。

※あらすじで色々とネタバレを含みます。気になる方はバックしてください笑

簡単なあらすじとしては、理詰めで麻雀を打つ受験生の井川ひろゆきと
一見すると豪放磊落で何も考えてなさそうなとぼけた感じ(だけど本当はめっちゃ強い)天貴史が
麻雀勝負をきっかけにともに交流するようになります。

その後、出会ったやくざの沢田を通じてひろゆきは代打ちとして麻雀稼業の道に進むことに。
天と再会し、紆余曲折ありながらも天とともに代打ち勝負に参加したところ、
天たちの敵役として赤木が立ちふさがります。

赤木の天才的な闘牌に絶体絶命の危機に陥るも、何とか半荘勝負で一矢報いた点。
赤木はその一度の前家を理由に代打ちを辞退してしまいます。

その後、物語は東西線という東と西のトップクラスの代打ちが鎬を削る大勝負に発展します。
そこで今度は東軍として仲間に加わった赤木は主人公のひろゆきに幾度も助言をして
東軍勝利の率役者となるとともに、ひろゆきの師として存在感を発揮します。

……ここまででも、十分に面白い。
私は麻雀は詳しくなく、アプリで少々かじった程度なのですが、
それでも複雑な読みあい、心理戦の様が非常に細かく描写されており、
十二分に引き込まれる内容です。

しかし、この作品で最も心揺さぶられるシーンはここから。
東西戦が終わって9年後、麻雀を愛していながらも天や赤木の才能に触れたことで、
自分が二流であることを痛感したひろゆきは、麻雀で飯を食っていくことをあきらめて
サラリーマンとして就職します。

自分の人生を生きていないような、くすぶった日々の中、ふと手にした新聞広告に記載されていたのは
「赤木しげる 告別式」の文字。

突然のことに戸惑いながらも、会場の岩手県へ向かうひろゆき。
告別式で赤木の亡骸に戸惑うも、一方でぬぐえない違和感を感じる。

その後、順番が逆であるはずの通夜へ参列するよう声をかけられ、ますます混乱するひろゆき。
そして夜、違和感の理由が判明する。
死んでいたはずの赤木が、生きていたのだ。

赤木はアルツハイマー型認知症を患ってしまい、脳細胞の大半が死滅し、
自我を保つことが困難になってしまっていた。
まもなく自我を失うと感じた赤木は、自分が自分として自我を保てるうちに、
自ら死を選ぶことを決意し、最後に旧知の友と語り合いたいという気持ちで
かつてしのぎを削った東西戦のメンバーを、この通夜に呼んだのであった。

というところがあらすじです。
ラスト三巻がいわゆる「通夜編」と呼ばれ、アカギが主人公となり
これからも生きていく友と言葉を交わしながら、彼の死生観に触れていく内容になります。

自ら死を選ぶことを選んだ赤木を、当然ほかのメンバーは阻止しようとします。
この天才に、死を選んでほしくない。どうしても生きていてほしい。
そんな思いが赤木の心を揺さぶっていきます。

そんなやり取りに、心を動かされながらも、最期は自分の意志を貫こうとする赤木。
死ぬことは怖くない。命は大きな流れの中で、変化し続けている。
死ぬことは、その流れの中に戻ることだ、と。

そして、東西線メンバーと一人一人言葉を交わしながら、
時に思いを語り、時に諭していく。

そして、主人公の一人である、ひろゆきが赤木と対面するシーン。
まず、対面するなり、この9年間、停滞してきただろ、と
ひろゆきの現状を一瞬で見抜いてしまう赤木。

ひろゆきはいいます。自分は才能ある赤木さんとは違う。
自分は凡人であり、勝てなかったら傷つくだけだ、と。

その言葉を受け、赤木はこう言います。

そんなに悪いかな…?
傷つくって…思うようにならず傷つくっていうかイラつくっていうか、そういうの悪くない…まるで悪くない…!
俺はいつもそう考えてきた…痛みを受ければ自分が生きてるってことを実感できるし、何より…傷つきは奇跡の素…最初の一歩になる…!

大抵の奇跡…偉業は…初めにまず傷つき…
そのコンプレックスを抱えたものが 通常では考えられぬくらいの
集中力や持続力を発揮しして成し遂げるものだ

つまり 天才とか言われる連中の正体は…
皆その類の異常者…さらりと生きていないっ…!

結局ハナっから勝つ人、負ける人なんていないんだ…結果表れるだけ…
勝ったり負けたりが…決めるなよ…自分が勝てないなんて決めるなよ…ひろ…

今ヒロは今の方がまともって言ったが…
そのまともって何…?

平均値、世間並みってことか…?
そういう恥ずかしくない暮らしってことか…?知ってる…?それだぜ…!お前を苦しめているものの正体って…

お前は、そのまとも、正常であろうっていう価値観と自分の本心、魂との板ばさみに苦しんでいたんだ…
考えてみろ…正しい人間とか正しい人生とか、それっておかしな言葉だろ…?ちょっと深く考えると何言ってんだかわからないぞ…
気持ち悪いじゃないか…正しい人間、正しい人生なんて…!

ありはしないが、それは時代時代で必ず表れ俺たちを惑わす…
俺たちはその幻想をどうしても振り捨てられない…
一種の集団催眠みたいなもん…まやかしさ…

そんなもんに振り回されちゃいけない…
そういう意味じゃ 駄目人間になっていい…!

誰だって成功したい
金や地位 名声 権力 賞賛…
そういうものは全部人生の飾りに過ぎない…!

ただ…やる事…
その熱…行為そのものが…生きるってこと……!
実ってヤツだ…!

成功を目指すなと言ってるんじゃない…
その成否に囚われ思い煩い、止まってしまうこと、熱を失ってしまう事…
これがまずい…こっちの方が問題だ…

いいじゃないか…!三流で…熱い三流なら上等よ…!
恐れるな…!失敗を恐れるな!

最終巻のこのシーンで、不覚にも目頭が熱くなりました。
今、自分の人生を何とかよくしたい、自分の人生を取り戻したくて
もがいている自分には本当にぶっ刺さりました。

個人的な意見ですが、ただの言葉にはあまり意味はなくて。
誰が言うか、ってすごく大事なことですよね。

人より優れた麻雀の才能を持ちながらも圧倒的な才能の前に
自分を卑下するひろゆき。
そのひろゆきの思いをくみ取り、上からではなく諭すように、
自分の人生を生きるように言葉を重ねる赤木。

マンガはフィクションですが、良いキャラクターには魂が宿り、
魂の宿ったキャラクターの言葉には人を動かす熱があると私は思います。

赤木というキャラクターには、その魂が宿っていて、
だからこそ時代をこえて今もなお愛され続けているのだと思います。

麻雀がわからないと最初の麻雀の部分がとっつきにくいかもしれませんが、
それでもこのラストの通夜編は、本当に多くの人に読んでほしいなと思いました。

私は今、今は経済的な自由を得るための勝負に熱をもって生きていけてます。

そして将来も、自分の心に熱を持ち続けて生きることを絶対に諦めてはいけない。
体がぼろぼろになっても、心は熱いまま死んでいきたい。
そんな気持ちにさせてくれる、文句なしにお勧めのマンガです。

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